ILLUSTRATION No.203

イラストレーション No.203 / 玄光社 2014

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■OHGUSHIインタビュー(一部抜粋)

 

 

―――美人画から始まって、表現スタイルに広がりが出ています。

O 1999年から水墨画同様の技法で描く「美人画」でキャリアをスタートさせて、2005年のエミリオプッチのコラボで一つの成功例ができました。ですが同様のパターンの依頼が増え、次第に窒息感と危機感を覚え、扉を開いて新しい風を取り入れたくなった。そこで「LIP」というシリーズを始めました。さらに、それらを描く中で体感した滲みを水彩紙で流動させる「粒子」に発展していきます。その時は発見の連続で楽しくて、ただがむしゃらにオリジナルワークを増やし、WEBで発表していきました。それが伊勢丹の目にとまって年間契約の仕事に繋がり、やがてはマックカフェ広告の赤い花に結びついていきました。

 

―――OHGUSHIさんの活動の中でライブペインティングも特徴的ですね。

O 美人画のライブは女性の顔をメインに描くので、何ミリかの誤差でも表情が変わってしまうシビアなものです。なのでライブ前は納得いくまで何回も練習し、その成果をまとめた説明書を作って挑みます。プラモデルの説明書みたいなものです。筆や絵の具に番号をつけて。一本の線の描き方でも、使う色や筆の番号から筆の運び方まで明記する。で、本番は説明書通りに淡々と描き進める。ライブとはいえ、アトリエでの練習をそのまま描けるかどうかに挑んでいる状態です。このような行程があるので本番に行き着くまでかなりの時間がかかる。逆に、そこまでやれば緊張する理由が無くなるので、とても楽な気持ちで描くことができます。結局、僕は「降りてくる」っていう才能めいた感覚が全く分からない人間なんです。

 

―――粒子についても進化が見えますね。

O 僕は水彩画家が絶対に使わないであろう、アクリルガッシュを使ってます。僕の場合はコシのある滲みでダイナミックな表現をしたいので。 絵によってはそのアクリルガッシュにさらに墨を混ぜるんです。墨はアクリルガッシュの粒子と絡んで、ギターでいうディストーションかけた音のような、目の荒い粒子の滲みになるんですよ。画面が締まるので、重厚なハイブランド感が表現出来ます。かつ、墨の粒子は細かく軽いので、アクリルの粒子をくぐり抜けて外に流れていく。その余韻もすごく綺麗なんですよね。 紙はアルシュ紙で、粒子が広がりやすい極細目を使ってます。

 

―――最後に、OHGUSHIさんは独自のポジション・立ち位置を持って活動されているように見えますが。

O 現在の社会でモノを作っていく中で感じるのは、SNSなどで自分や他者の活動が数値化されるので、特に若い人は安易に比較評価してしまい、本来の自分を見失いやすい環境にあるのではと感じています。他者との繋がりはとても大事ですが、そんな時代だからこそ、他者と自分の意思の境界線をバッサリ引いて、本来の自分の意思や思考の輪郭を明確化する必要がある。周りに翻弄されて特別な事をしようとせずに、境界線の中の狭い自分の世界を深く深く掘り進む。そうやって出来たものこそが本来の「自分にしか出来ない表現」に繋がり、やがて仕事や評価も「最良の結果」になると僕は信じて活動しています。なので、独自とはまだまだ言えませんが、楽な立ち位置で活動が出来ているのかなと思います。

 

 

 

 

 

 

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